「時間がない」は錯覚かもしれない。心理学が教える忙しさの正体

忙しさに頭を抱える女性

「今日も一日があっという間だった」

そう思いながら、心だけが置いてけぼりになっていく——。そんな日々が続いていませんか?

実は、私たちが感じる「時間のなさ」は、現実の忙しさだけでなく、心の中のある感覚がつくり出している可能性があります。

■「時間がない」の正体は、お金だった?

カナダの心理学者エリザベス・ダン博士は、ある日、自転車で転倒したことをきっかけに、ふとこう思ったといいます。

「私はなぜ、こんなに急いでいたんだろう?」

多くの人が、昔よりも働きすぎているせいで時間が足りないのだと考えがちです。しかし、ダン博士がデータを調べたところ、実は現代人は50年前と比べて、極端に働いているわけではなく、自由時間もむしろ増えているという研究結果が出ていました。

それでも、どうして「時間がない」と感じてしまうのでしょうか?

■「時間の価値」が上がると、足りなく感じる

トロント大学とスタンフォード大学の研究チームは、次のような興味深い説を提唱しました。

「私たちは、時間をお金としてとらえるようになったことで、より時間が足りないと感じるようになった」

たとえば、収入が高い人ほど「時間がない」と訴える傾向があります。実際に忙しい人もいるでしょうが、自分が、時間の高い価値を持っているという感覚が「時間をムダにできない」と思わせるのです。

ある報告では「自分はお金をたくさん持っている」と感じた学生たちは、それだけで「時間が足りない」と感じるようになったと報告されています。実際に忙しくなくても「私は価値ある時間を持っている」と思うことで、かえって余裕を失ってしまうのです。

■心の余白を取り戻すには?

では、どうすればこの「時間に追われる感覚」から抜け出せるのでしょうか?

少し意外かもしれません。

「あえて、時間を無駄にすることが有効です」

たとえば…

他人を助けるボランティアに時間を使う お金にならない趣味や、ペットと過ごす時間を楽しむ 何も生産しない「ぼーっとする時間」を意識的に確保する

こうした行動は「自分の時間は他人のためにも使える」という感覚をもたらし、時間に追われている感覚を軽減すると報告されています。

■忙しさは、気持ちの問題かもしれない

私たちは、スケジュールが詰まっているから忙しいのではなく「時間は貴重」「損したくない」と思うほどに、心が焦ってしまうのかもしれません。

それは、生活や仕事を頑張っている証でもありますが、時には立ち止まって、自分の時間の価値を、少しだけ見つめ直してみませんか?

【おわりに】

時間に追われていると感じたときほど、あえて立ち止まることが、自分のペースを取り戻す一歩になります。

時間を無駄にする勇気を持てる人こそ、きっと自分らしく生きる力を持っているのかもしれません。

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